私は、毎年正月に易占い書の記述に自分の知識を加えた傍目八目(おかめはちもく)の素人干支占いでその年を展望しています。占いの成果は及第点スレスレであまり自慢できませんが、ここは老人の図々しさを発揮して今年も私の見立てにお付き合いください。
干支占いでみる2026年
ではこの2026(令和8)年はどうなるでしょう。表題の通り今年の干支は丙午(ひのえうま)で、十干の「丙(ひのえ)」と十二支の「午(うま)」が組み合わされています。十干の「丙」は、十干で第三番目に位置し、「草木が力強く伸長してその姿かたちがはっきりした状態」を表しています。ということは、「前年に生まれた動きが勢いを増して成長いくのが今年」と言うことでしょう。
一方、「午」は十二支の折り返しに当たる7番目に位置し、十二支を普及させる工夫として昔の人は動物の馬を割り当てました。古代中国では、馬を神様の使いとして大切に扱われました。中でも青い毛並みの馬は貴人を乗せる特別な馬で、青い馬が駆ける姿は物事が順調に進展する姿を象徴すると考えたようです。現代の日本でも、青い馬の置物や絵画が豊かさを引き寄せると信じられ、身近に置かれている方も多いようです。

また、馬は古くからおとなしい性格と体型が評価され、移動や荷運びの手段として活用されました。仏教では、頭の上に馬の頭を載せ、怒りの表情をしている馬頭観音が観音菩薩の一種として参拝されています。昔、馬を使役している農家では、馬が死ぬと供養塔や馬頭観音像を建てて祀りました。東上沿線の地域にも沢山の馬頭観音像が残されています。

右側・寛政4(1792)年)
万物が 「木・火・土・金・水」の5要素から成り立つとする五行では、丙と午は両方とも「火」に当たります。五行の「火」は、炎や太陽、熱いものや光輝くものを象徴し、季節は夏、方位は南、色は赤、時間帯は昼を示すとされています。十干と十二支で「火」が重なる丙午の年は、エネルギーが満ち溢れる勢いがある年とされています。これも縁起が良い話ですね。
過去の丙午はどんな年だったのか
このように干支だけでなく五行の面でも今年は勢いがある良い年ということになるのですが、過去の丙午がどの様な年だったのかを確認しておきます。各種の記録が残っている明治以降をみると、1906年(明治39年)と1966(昭和41)年が丙午の年でした。
まず1906年(明治39年)は、近代国家として急速な発展を遂げて世界的な評価を獲得した時期でした。この年、政府は鉄道国有化法が制定して全国各地に設立されていた鉄道会社を統合して官設鉄道に一元的に管理・運営する体制に移行しました。当時、鉄道事業の中には電気鉄道も多く、電力を鉄道事業者が自ら発電所を建設して供給されていましたが、これらの発電所は、後日、電力発電会社に統合されて日本の近代産業のエネルギーインフラとなりました。
この年、韓国都督府が設置されて半官半民の南満州鉄道(満鉄)が設立され、日本の大陸進出が本格化、国内では軍隊が国政に対する影響力を確立しました。韓国半島や満州には陸軍だけでなく沢山の日本人が移民して開拓に身を投じました。朝鮮・満州でも経済が発展して豊かな生活を享受できると大部分の人が期待したのです。この時期の日本では、軍部の独走を許す機運が生まれ、その勢いは日中戦争や太平洋戦争を招いて日本を存亡の危機にまで追い詰め、朝鮮・満州に移住した方々は大きな犠牲を被りました。

次の1966(昭和41)年は、高度成長の真最中でした。10月から始まった「いざなぎ景気」は1970(昭和45)年7月までの4年3か月にわたり、国民全体の所得水準を押し上げ、トヨタ「カローラ」や江崎グリコ「ポッキー」など現在も親しまれている多くの商品が発売されました。この年は若い女性の間でミニスカートが流行し、ビートルズ来日して音楽ファンが熱狂、札幌で冬のオリンピックの開催が決定するなど明るい話題が続きました。その中でこの年の出生数は136万人と前年(182万人)・後年(194万人)に比べて50~60万人も少なくなりました。その原因は良く分からないのですが、江戸時代から丙午に生まれた女性は気性が激しく、嫁しては夫を食い殺すという言い伝えが災いとも言われています。
一方海外では、米国がベトナム戦争に本格参入し、中国では共産党の権力闘争が国民を巻き込んだ文化大革命が始まりました。これに刺激を受けた欧米や日本の若者たちが反米運動を展開しました。彼らの反米運動は当時の自民党政権に対する批判に繋がったのですが、経済成長の成果が実を結び始め、多くの人々は経済的な豊かさと社会の安定を体感し始めました。その後に起きた2度の石油危機を乗り切り、大手企業が国際的な展開をし始めると、人々は日本経済に対する自信を強め、勢いは1990年代初頭の経済バブル崩壊で終焉しました。
以上紹介した過去2回の丙午の年に起きた事柄に共通するのは、前年にスタートした動きが本格化し、その動きは社会全体を包み込んで翌年以降も持続する性質があるようです。では今回の丙午はどうなるのでしょう。
2026年はどうなるか
私は、世界各国が混乱する中で今年の日本は基本的に安定した状況を維持すると予想しています。何か平凡でつまらない予想だと思われる方もいると思いますが、世界的に経済社会が混乱する中で日本だけが社会の安定を維持し続けるというのは貴重です。昨今の東京株式市場が賑わっているのは、企業の業績もさることながら、その基盤を支える日本社会の安定性に対する評価も含まれています。
やや古いのですが、今は亡き米国の経営哲学者P・ドラッカーは1993年に公刊した「ポスト資本主義社会」で、10世紀以降の西欧産業社会を独自の視点から概観して「歴史は数百年に一度、際立った転換が行われる」とし、世界は2020年前後から新たな社会に転換すると予言しました。ドラッカー先生の神託を信じると、丙午の今年はすで始まっている新しい時代が本格化する年になると期待できそうです。
新しい時代を先取りしているのが株価でしょう。昨年10月に高市政権が発足すると、日経平均株価はそれまでの4万円台半ばからスルスルと上昇して10月末には5万円台に達し、市場関係者は「高市ジャンプ」と呼びました。その後若干の調整場面がありましたが、この1月には再び5万円台を取り戻しています。高市内閣は日本の国力強化に向けて経済成長を促進する必要性を訴え、今月下旬から始まる通常国会で審議される来年度予算で財政面の裏付けを手当てすることにしています。高市首相に対して中国政府が一生懸命に足を引いていますが、国民の支持率は高く、日本社会の安定性は揺るぎません。ここから余程のこと(例えば高市首相の退陣など)が無い限り、株価も堅調に推移するでしょう。
昨年1月の本欄で紹介した生成AIは新しい時代を象徴するディバイスです。生成AIの進化は早く、今年は試行段階から実用段階に移行してその便利さを多くの人々が実感することになるでしょう。ただ残念なことに、AIの開発は米国や中国が先行して日本は後れを取ってしまいました。これに対して政府は、既に進めている半導体の国内生産基盤の構築に併せた「フィジカルAI戦略」を発表しました。フィジカルAIは、製造業や医療、物流などの現場でロボットや工場を自律的に稼働させるAIで、米中が進める言語・画像中心のAIとは大分違います。今年中には日本版のAIが姿を現します。
もう一つの期待は、世界の人々が日本を世界的な海洋国家として意識するようになることです。日本が広大な排他的経済水域(EEZ)を抱えている国であることはご案内と思いますが、南鳥島周辺の海底下には高濃度のレアアース泥が存在しています。政府は来年からその採掘を開始する計画で、今月から事業の実施に向けたシステム接続試験を行います。日本の領海とEEZの海底にはレアアースの他に金、銀、銅、亜鉛など鉱物資源や石油、メタンハイドレートなどエネルギー資源の存在が確認されており、これらが採取されるようになると日本は一躍世界的な資源大国に躍り出ます。
こう考えると今年は明るい期待の年のように感じますが、今年が丙と午の両方が五行の「火」に当たることに留意しておきましょう。昨年は岩手県大船渡市、群馬県妙義町、神奈川県伊勢原市などで大規模な山火事が各所で発生し、年末には大分市佐賀関で大火が発生して沢山の住戸が焼失しました。東日本大震災や能登半島地震などの巨大地震でも大火が発生しています。今年は火山噴火も含めて火災に対する備えを怠ってはなりません。
当たるも占い、当たらぬも占い。今年が皆様方にとって良い年になりますように。
長谷川清:全国地方銀行協会、松蔭大学経営文化学部教授を経て2018年4月から地域金融研究所主席研究員。研究テーマは地域産業、地域金融。「現場に行って、現物を見て、現実を知る」がモットー。和光市在住。
