景気が悪いのは

 自民党総裁選のあたりから、景気が後退しているということが既定事実になり、景気対策が一番の優先すべき政策のような論調になってきている。
 私のように、景気分析・予測を専門としてきた立場から見ると、景気の厳密な定義から言って、少なくともこの夏場までは景気は微妙な情勢ではあったが、必ずしも後退しているとはいえなかった。はっきりと悪くなってきたのはごく最近、この9月ごろからである。
 今現在は、景気が悪化していることは確かであるが、それ以前から景気がよいという声は、特に地域ではあまり聞かれなかった。景気の定義からすれば、2002年1月を底としてほぼ6年前後景気は上昇してきた。上昇期間でみれば戦後最長の景気である。
 それにも関わらず、景気がよいと感じられないのはなぜなのか。
 一部には、小泉構造改革が格差を助長したせいだとする意見もあるが、これはとんでもない見方である。
 景気が上昇してきたのに、地域にその恩恵が及ばなかった最大の理由は「グローバル化」にある。「グローバル化」とはモノ、カネ、ヒトが国境を自由に行き来するようになったことと、中国を初めとし新興国が世界市場で大きな地位を占めるようになり世界中の国が経済競争に参加したことと、両面がある。
 日本企業も当然、世界中の国と競争しなければならず、価格も賃金も上げられない。競争力のある一部の製造業はグルーバル化に伴う世界の需要増を受けて輸出が増加し業績が改善したが、そういう好調企業でも賃金は上げていない。
 こうして輸出主導で景気は上昇しても、家計の所得は増えず、個人消費は冷えたままだ。これが、地域の景気、特に個人相手のビジネスが不振をかこつ最大の理由だ。
 もう一つは、株価が上昇はしても過去のバブル期、あるいは1999年から2000年の「ITバブル」期よりは低く盛り上がりに欠け、地価も多少戻したに過ぎない。要するに住宅バブルが発生し、崩壊した米国と異なり、日本ではバブルが存在しなかった。昨年来、株も土地もさらに下がっている状況。
 以上のような背景で、地域の景気は低迷を続け、足元ではさらに落ち込みつつある。これに対し、麻生政権は補正予算を編成、財政を出動させる構えだ。確かに、財政が縮小し続けたことが経済の停滞を助長した。財政を拡大すれば当座は多少の救いになるだろう。しかし、経済を動かす大きな力からみて多少の財政出動などあってなきがごときだ。
 それに、財政出動はかならず後に債務を償還しなければならず反作用を伴う。
 景気が悪化していることは確かだが、ここはあわてて対策を打つようなことをせず、企業、家計の中長期的展望を示すような構造的改革を地道に実行することしかないと思われる。

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