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非寛容社会

神奈川県のある大学で開かれた公開講座に参加させていただき、特に2つの指摘に考えさせられた。一つは、ある正統派エコノミストの方の指摘で、企業の社会保険料負担の増大が非正規雇用の増加を招き、日本経済の停滞を助長したというもの。企業は社員の年金保険料、健康保険料を折半で負担する。それはそれで重いが、さらに近年は高齢者の医療保険の財源を民間の健康保険組合から拠出することが常態化していて、ますます企業負担が大きくなっている。膨張する社会保障費は、本来消費税なり公平な財源で手当てすべきところ、最も反発の少ない企業の健康保険に頼る。結果、正社員雇用の費用は重くなり、企業は非正規雇用に傾斜する。結局、根源は増税に躊躇する政治であり、それを誘導する世論、マスコミである。このエコノミストもそういう世の中の現実を踏まえ、「せめて被用者皆保険を導入すべき」と述べている。

もう一つは、ある大学教授の人口減少をテーマとした講演で、日本は非嫡出子が少ないという問題である。2019年で出生に占める非嫡出の割合は日本は2.3%である。これに対しフランス61.0%、ドイツ33.3%、アメリカ40.0%。差があまりにも大きい。出生率はドイツは日本と同様低いが、フランス、アメリカはかなり高い。非嫡出子が少ないのは、嫡出子との扱い関係の制度面の差もあるのかもしれないが、それとともに社会の受け入れ度合いの違いもあるのではないか。有名人の不倫を大騒ぎバッシングするような世の中では、非嫡出子を生むのは肩身が狭い。

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東上沿線物語
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