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『柳沢吉保の実像』、『強欲不動産』

 相変わらずの雑本読みだが、最近読んで面白かった2冊を紹介したい。1つは、『柳沢吉保の実像』(みよしほたる文庫、野澤公次郎)。三芳町教委が発行しているのは、柳沢吉保が川越藩主として三富新田を開拓した地域ゆかりの人物だからだ。著者は、甲斐武田氏の歴史や甲斐源氏の流れをくみ甲府藩主であった吉保に詳しい人で本書執筆時は(財)信玄公宝物館館長を務めていた。そのため本書は史実に基づき、吉保に対する世の誤解を解き、正しい姿を伝えようという姿勢で貫かれている。

 柳沢吉保は、東上沿線地域にとっては川越藩主であり、三富新田を開拓した恩人であるが、世には、将軍綱吉の寵臣で異例の出世で権勢をふるった、「生類憐れみの令」を作らせた、将軍側室の下げ渡しを受け自分の側妾としその子を御落胤と称してお墨付きを強要した、など様々な悪評がまかり通っている。著者はこれらはほとんどが事実無根、針小棒大の類いであることを証明するとともに、領国内の産業・文化の振興など数々の功績を示し、六義園の造園に見られる吉保の教養豊かな人間像を描いている。まさに「実像」と虚像との落差を見るのに格好の書である。

 もう一つの『強欲不動産』(文春新書、吉松こころ)は、マンション価格の高騰、「令和バブル」の根源に迫った書である。著者の吉松氏は「全国賃貸住宅新聞」で記者生活の後、不動産業界向けの通信社を運営し、現場を知り尽くしている方だ。港区のタワマンが一部屋300億円、ニセコの別荘が30億円といった価格がなぜつくのかは誰でも抱く疑問だが、本書はそれをひたすら現場を歩き答えを見つけた。1年間にわたり国内はもとより、香港、上海、ロンドン、ロサンゼルスを回った。

 そこで得た結論は、「日本の不動産を爆買いする資金は、香港や台湾、中国本土からの「逃資」であること」だ。割安で安全性が高い日本の不動産に資産を逃がしているという意味だ。日本の不動産バブルは国際的な現象である。これが止まるのは、割安でなくなるか、規制がかかるか。おそらく円高はきっかけになるだろう。

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