身近な発見

 誰でも子供時代には自分の置かれた環境を客観的にわかってはいないと思う。それに、私も含めてサラリーマンになり都心に勤めるようになると、家は寝に帰るだけで、まして転勤でもすれば、生まれ育った地域のことはどんどんうとくなる。
 私は10年ほど前に出身地の富士見市に戻ってきたが、少し歩くとすぐ道に迷った。それが2年前から、地域紙の発行という仕事を始めてみると、がぜん地域に詳しく、また自分や関係している人たちの立場が見えてくる。
 私は自分が貧乏な農家の息子と思っていたが、取材によって父方の祖父は旧大井村の収入役を務め、その兄は村長、母方の父は上福岡の商工会長と、それなりに地域に根をはっていたことが確認できた。今回、父方の叔父の紹介で旧大井村役場の物語を取材させていただき、次号に載せる。今までも役場の建物は近くは通っていたが、何も考えてはいなかった。それが、今回で自分の係累の足跡とともにその歴史的価値が実感できた。
 さらに、私の小中の同級生で建築士をしている友人が、歴史ある建物の保存に熱心でその旧大井村役場の詳細な調査を行っていたことも知った。彼には次々号に紙面に登場してもらう。友人でもたまに酒を飲むくらいでは本当の姿はわからないものである。
 いずれにせよ、この仕事のおかげで私はただぼんやり生きていたらわからない、地域の人々の姿をよりくっきりと理解できるようになり、これはこれでありがたい経験であると感じているのである。それが「記者」の特権というものであろう。

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