三芳町でサツマイモ農家が並ぶ通称「いも街道」を北に進み、多福寺参道を過ぎて左に折れたあたり、農家風の建物前に「雑木林の茶屋 縁側日和」と書いた小さな看板が見える。古民家と雑木林の庭、地域の自然と伝統を活かした和カフェだ。座敷に上がり、広い窓から見る林の景色は絵に描いたようでハッとさせられる。

お茶農家だった実家をリフォーム
古民家カフェ「雑木林の茶屋 縁側日和」は、店主の渡辺隆之さんが2022年に開いた。実家はお茶農家・販売業だったが、父親、兄が亡くなり、渡辺さんは職場を辞め空家になっていた母屋をリフォームした。



お店は、縁側から雪見障子越しに庭を眺められる広い座敷と、大きな窓から雑木林が見える、薪スト-ブのある和モダンな空間から成る。古くてもしゃれている店のつくりと、一番の売りは、なんと言っても建物を囲む武蔵野の雑木林の風景だ。

三富新田の一角
カフェのある三芳町上富は、江戸・元禄時代、川越藩主柳沢吉保によって開拓された三富新田に位置する。三富新田に入植した農家は、通り沿いに屋敷、その奥に畑、さらに最後方に雑木林を設けた。雑木林は落ち葉を堆肥として耕作に活かし、その農法は2021年世界農業遺産に認定されている。渡辺さんの実家は、本家筋が三富新田の開拓農家で、雑木林も受け継いだ。

食と雑木林の風景と
三富新田の雑木林も現在では、住宅や工場・倉庫で分断され、まとまった形で残っているところは少ない。カフェの庭は面積があるだけでなく、昔のままの姿が野趣に富み美しい。渡辺さんは、「雑木林はそこら中にありますが、家の中から見えるのはそう多くないかもしれません」と話す。
カフェでは、昼時はうどん、他の時間は狭山抹茶を使ったスイーツなどがメニュー。うどんは、埼玉県産の地粉を用いた武蔵野うどん、スイーツでよく出るのは焼き芋という。

お客さんは「食と雑木林の風景とセットで来てくれます」とのこと。少しずつ認知されてきている手応えを感じているようだ。(取材2026年3月)
