観光客でにぎわう川越一番街のはずれ札の辻交差点を市役所方向に折れると右手にエスニック風の店舗が現れる。「マンゴロベ」。アフリカ雑貨・食品を専門に扱う(有)アフリカンスクエアーの直営店だ。店内には、かご、バッグ類をはじめカラフルなアフリカ製品が所狭しと並ぶ。同社は、牛尼恭史(うしあま・やすし)社長が若き頃、アフリカを放浪の後、現地に貢献したいと立ち上げた。同社の歴史とアフリカについて、牛尼社長にお聞きした。

ケニア紅茶の販売から始まる
―牛尼さんはいつからこの仕事をされているのですか。
牛尼 1990年頃、友人がケニアで日本ケニア交友会という形で紅茶を輸出していました。私は、それを東京で売ろうと交友会の関東支部を作りました。そして2年後に独立して今の会社を設立しました。
―それ以前からアフリカに関わっていたのですか。。
牛尼 アフリカは、アルジェリアで石油や天然ガスのプラントを建設する日本の会社で3年くらい働いていました。
―日本で就職して派遣されたということですか。
牛尼 現地採用です。それから、2年間くらいアフリカを旅行しました。いわゆるバックパッカーです。
―そもそもアフリカに関わったきっかけは。
牛尼 元々アフリカに行こうと思って日本を出ました。アルジェリアで働いたのはお金がなくなったからです。それでアフリカが気に入って、旅行の後、日本に帰ってケニアの紅茶を販売するところから商売を始めたわけです。
―ケニアの紅茶はどんな特徴が。
牛尼 元々はスリランカから来ている。木が新しいからフレッシュ。火山性の土壌、気候も合っている。今、輸出量はスリランカより多い。もともと旧宗主国のイギリス向けが多かったです。

―紅茶から始まったけれど、その後扱いが広がってきたわけですね。
牛尼 紅茶が最初に扱った商品ですが、紅茶だけではそんなに売れません。だから広げざるを得なかったのです。
扱いはファッション雑貨と食品が多い かご、バッグが人気
―現状、扱っているのはどのような分野ですか。
牛尼 ファッション雑貨と食品が多い。ファッション雑貨は、かご、バッグ、帽子、布もの、あとインテリア雑貨。食品は、ドライフルーツ、チョコレート、コーヒー、紅茶などです。



―一番売れているのは。
牛尼 かご、バッグです。
―国では。
牛尼 全域ですが、やはり特別なものがある国が多くなります。ケニア、モロッコ、西アフリカのガーナとか、マダカスカル、エチオピア、ジンバブエも結構ある。
日本向けに商品の開発、指導を
―ただ仕入れるのでなく商品の開発、指導をされているのですね。
牛尼 現地で日本のマーケットに合うように変えてもらっています。いいモノがあるんだけどそのままでは日本に合わないものがあります。要するにアフリカからたくさんモノを入れたいということがあるわけです。たくさん買ってもらうには、日本の生活の中で使えるようなものとか、日本人がいいと思う形とかにアレンジしなければなりません。
―社長もまだ現地に出向くのですか。
牛尼 私も年2回くらいは行きます。
―現地で交渉する相手は生産者ですか。
牛尼 いろいろです。生産者の場合もあるし、そこから買っている商人も。個人もグループもあります。
―アフリカは未開の地のような先入観から見ると、買い付けは結構大変なイメージです。
牛尼 地方は結構大変ですが、昔とはずいぶん変わっています。今は発展しているから都市部は日本とあまり変わらない。地方の都市まではバス、車もある。そこから先は我々も行くケースは少ない。
川越の直営店舗「マンゴロベ」
―日本での販売先は。
牛尼 卸が多いです。ファッション系であれば、チェーン店、ファッションや洋服のブランド、インテリア。あるいは個人でやっている民芸雑貨のお店など。
―自分で売られることは。
牛尼 川越に直営店があり、あとはネットショップです。
―川越の店舗「マンゴロベ」とはどういう意味ですか。
牛尼 「マンゴーはいかかですか」の意味です。西アフリカの旅で電車などに乗って疲れている時、駅に止まると窓からマンゴー売りとか水売りとかが来る。「マンゴロベ」。食べたいなと。
―自社のブランドもある。
牛尼 今はあまりないです。洋服にはつけたりはしていますが。
―「ショコラマダカスカル」とは。

牛尼 チョコレートのブランドです。これはよく売れた。食品では、ドライマンゴー、 エチオピアコーヒーも評判がいいです。

―今人気商品は何ですか。
牛尼 やはりかごとバッグ。どこの国にもいろいろなかごがある。モロッコ、チュニジア、 ケニア。素材も、草、椰子の葉、麻とか。水草で編んで色をつけたセネガルバスケはとてもカラフルです。


―これから売り出したいのは。
牛尼 探さないといけません。
スーパーフード モリンガ
―スーパーフードと言われるモリンガはどうですか。
牛尼 タンパク質が豊富で栄養価が高い。特にアフリカで使うといいのです。子どもが栄養がとれていない。

―ルイボスティーは。
牛尼 体にいい。抗酸化作用が強い。うちのは普通のよりおいしいです。
アフリカ商品は品質がよい
―全般にアフリカ商品のよさは何と言ったらよいですか。
牛尼 計算して作られたものではありません。売ろうとしてではなく生活で使おうとして作った。だから丈夫で、素材も自然なものを使っている。かごもアジアのかごと比べてアフリカの方がちゃんと作っている。食品も自然の食品で、すごくおいしい。
―フェアトレードをうたっていますか。
牛尼 意識はあります。アフリカからものをたくさん入れて現地に貢献したいというのが根本です。ただフェアトレードと強くは言っていません。
―単なるビジネスでなく現地を支援する活動も。
牛尼 現地で直接お願いしたり指導したりしていると、友達になるから向こうで困っていることがあればサポートします。たとえば洋服を縫ってもらっている縫製学校がある。利益の中からミシンを贈る。今毎年6台くらいずつ。あと教材用の布。紅茶も収益の中から寄付はしている。その場その場でやれる範囲でということです。
―社員にJICA(独立行政法人国際協力機構)の海外青年協力隊出身者がいるのですか。
牛尼 何人かいます。海外協力に関係した人が結構いる。
―アフリカ専門に扱っている会社は他にもあるのでしょうか。
牛尼 アフリカ雑貨専門のところは少ない。他にはないかもしれません。
アフリカ人は素朴で人と人との関わりが濃い
―最近のアフリカについて感じていることは。
牛尼 経済成長はしていますが、そこら中で問題が出ています。内戦もある。まずアフリカ人が何とかしなければいけない。
―アフリカのすぐれた点は何ですか。
牛尼 人がいい場所が多い。素朴で人と人との関わりが濃い。ちゃんと付き合ってくれます。
―変化している部分はありますか。
牛尼 成長で伝統的なものが失われていることはあります。うちが扱っているようなものは減ってきている。探さないとない。以前扱っていたものが今は骨董品になっている。
―社長はおいくつですか。
牛尼 68歳です。

―1992年に会社を作られた時は。
牛尼 34か35くらいです。
―出身は。
牛尼 東京生れです。
―本社や店舗が川越にあるのは経緯がありますか。
牛尼 母親が東松山に住んでいて近かったことぐらいです。
―20代から30代前半にアフリカを放浪していたわけですから、元々旅行好きなのですね。
牛尼 そうですね。特にあの時代はそういう人がいた。ヒッピーまではいかないけれど。
(取材2025年7月)