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豪商横田家の別邸だった料亭・山屋(川越) 170年を超す建物と庭園

観光客で賑わう川越市の一番街商店街から路地を入ったところにたたずむ料亭山屋。元々江戸時代、川越藩の御用商人だった豪商横田家の迎賓のための別邸として建てられた。簡素ながら風流で品格ある建物と庭園は、築170年を超す歴史的建造物で、周囲と異なる空間を形成している。小江戸川越観光協会の会長も務める5代目当主の松山潤さんにお話をうかがった。

山屋玄関

横田家は関八州長者番付で横綱とされた大尽

―山屋さんは元々江戸時代の川越の豪商だった横田家の別邸だったということですが、横田家とは。

松山 横田家は米穀商とか酒・醤油業、金融業とかいろいろやられて、江戸末期には江戸を除いた関八州長者番付で横綱とされた大尽だったそうです。江戸蔵前、大阪堂島の米相場を動かしたと言われています。川越藩の御用商人でした。当主は代々横田五郎兵衛を名乗っていました。

―屋敷はどこにあったのですか。

松山 本宅は現在の旧埼玉りそな銀行川越支店(2020年移転)の敷地にありました。別宅がこの山屋だったそうです。

横田家のあった旧埼玉りそな銀行川越支店

―別宅とは何に使われていたのでしょうか。

松山 横田家は慈善家でしたので川越藩に対して資金を用立てなどしていたらしい。藩主とか家老達を呼んでお話することも多かったのではないでしょうか。

明治初年に山屋創業

―どういう経緯で山屋さんがこの建物を。

松山 川越藩は幕末期に参勤交代の他お台場の砲台守を任されるなどで財政が苦しくなり、横田さんも資金を拠出し、最終的にはいろいろ私財を処分していく中で別邸も譲り渡したのだそうです。

―山屋さんは横田家と姻戚関係にあるのですか。

松山 そうではありません。うちの初代松山半兵衛は横田本家の隣に住んで仕出し屋をしていたそうです。その縁で別邸を譲り受けました。明治初年のことです。

―現在の川越に横田家の残したものは他にあるのですか。

松山 横田さんの醤油部門が今の松本醤油商店さんです。他はわかりません。

―山屋さんは、明治初年以来ずっと料亭を続けてこられたのですか。

松山 そうです。今年創業153年目です。戦争など大変な時期もありましたが。

―川越で一番古いお店ですか。

松山 料亭としてはそうですね。料理屋としてはうなぎ屋さんの方が古いと思いますが。

自然の趣きがある庭園

―敷地はどれくらいあるのですか。

松山 約850坪です。

―建物は。

松山 中庭を囲む形の構造で7部屋あります。

山屋:渡り廊下

―お庭は風情がありますね。

松山 作り込んだ箱庭風の庭ではなく、自然の趣きがあると言われています。

山屋:中庭

―建物や庭は昔のままなのですか。

松山 横田家の時代からですから、170~80年はたっているのではないでしょうか。建物は多少手直しはしていますが、基本的にそのまま使っています。庭も庭木の植え替えはあっても、昔の庭をそのまま活かしています。

山屋:58畳の杉の間

関東風の会席料理

―料理は。

松山 関東風の会席料理です。

会席料理 (山屋ホームページより)

―利用のされ方は。

松山 個人の長寿の祝いとか七五三、結婚式、会社の接待、団体の集まりなど。ただ、今はコロナ禍で会社関係は減っていますが。

―ランチも始められた。

松山 平日のみ、予約なしで1760円からです。売り切れてしまうことも結構多いです。

―松山さん何代目ですか。

松山 5代目です。

―このような歴史的な建造物を維持し伝えていくのは意義があります。

松山 ただ、大変です。建物の維持管理は、放蕩息子を抱えているみたいに費用がかかります。固定資産税も馬鹿になりません。

―文化財に対する行政の補助はないのですか。

松山 伝統的建造物群保存地区にありますので修理費など補助制度がありますが、いろいろ制限もあります。もっと支援してほしいという思いもありますが、市も財政は厳しく、また川越は他にも古い建物が多いです。

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小江戸川越観光協会の会長

―小江戸川越観光協会の会長をされているそうですが、川越観光をめぐる最近の変化をどう見ておられますか。

松山 昔と比べて年齢層が若くなりました。十数年前に川越は着物で歩く街というイメージができてレンタル着物屋さんも増えまして、一方で6、7年前に氷川神社さんが縁結び風鈴という催しを始め 着物と夏の文化がマッチして非常に若返りしました。プラスして町中が蔵造りという非常に珍しい風景ですので、そこに着物姿が映えるということでSNSで興味を持つ若い層が増えています。

川越一番街

―コロナの影響はどうですか。

松山 ひところまったく人通りがない時期もありましたが、都内に近いこともあり他の都市に比べて受け入れ人数の回復は早かったかもしれません。ただ、若年層が多いのでお土産を持つ姿があまり見受けられず、経済的効果はまだまだかも知れませんね。

―若い人は川越の歴史をどう受け止めているのでしょうか。

松山 他ではなくなってしまった昔ながらの名所旧跡、建物がありますし、古い建物を今に生かして商売がなされているわけで、川越という街自体が新鮮に映るのだと思います。

―川越観光の課題は何でしょうか。

松山 オーバーツーリズムと一般に言われていますが、京都ほどでないにしても中心市街地に人が集中してしまっている面はあると思います。中心部以外に分散していく観光振興を考えなければならないと思っています。

―松山さんから見て川越のおすすめは何ですか。

松山 うなぎ屋さんは長い歴史のある店、新しい店を含め多いですし、最近はコーヒー戦争と言わないまでもコーヒー屋さんがずいぶんと増えています。

松山社長

(取材2022年11月)

山屋ホームページ

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