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日本一高い煙突 豊島清掃工場

東上線上り電車に乗り、大山駅を過ぎ下板橋駅に近づくあたりで右手窓越しに高い塔が見えてくる。線路は右にカーブするので、池袋駅に近づくと塔は左側に移る。塔は、豊島清掃工場から出た排ガスを放出する、高さ210mの日本一高い煙突である。清掃工場はどんな役割を果たしているのか、なぜこんなに煙突が高いのか。4月22日、豊島清掃工場の見学会に参加した。

東上線下板橋駅付近車窓から見た豊島清掃工場煙突
池袋駅北口から

東京二十三区区清掃一部事務組合

豊島清掃工場は「東京二十三区清掃一部事務組合」が運営しています。ごみの収集、運搬、処理、処分から成る清掃事業は昔は都清掃局ですべてやっていました。2000年以降23区の事業となり、収集と運搬は各区で、中間処理(清掃工場)は23区が設立した東京二十三区清掃一部事務組合による共同処理方式で、最終処分は都に委託しています。今23区内に清掃工場は22施設(稼働中は20)ありますが、すべての区にはありません。台東、荒川、文京、新宿、中野、千代田区にはありません。当時、23区はすべての区に清掃工場が整備されるまでは共同処理を行うとしていましたが、ごみ量の減少や厳しい財政状況により共同処理が望ましいことを確認しました。そこで、清掃工場は都でもなく各区でもなく23区共同で運営しています。共同処理の費用として各区はごみ量に応じた分担金を組合に払っています。さらに23区間では清掃工場がある区とない区の負担の公平を図るため金銭による調整も行っています。(各区が一組分担に紛れ込ませて調整しているだけで、清掃一組が工場が無いからといって多く分担金をとっているわけではない)

「池袋マンモスプール」跡地に立地

豊島清掃工場は山手線、埼京線、東上線、首都高速道路に囲まれた三角地帯に立っています。ここは昔西武鉄道系の「池袋マンモスプール」(冬はスケート場)があった場所です。 敷地は12000㎡あります。都条例で2割を緑地化しなければならず、屋上、橋の上、花壇など苦労して緑地を作りました。

1999年に開業し、焼却炉は2基(見学時1基停止中)備え、処理できるごみは1日あたり最大400㌧です。24時間稼働しており、約80人の職員や委託会社の社員が働いています。

高さ210m、「サンシャイン60」より高く排出

焼却炉から出た排ガスはばいじんや有害物質を取り除き、煙突から放出しています。この煙突は高さ210mあり、清掃工場では日本で一番高い煙突です。近くに高層ビルの「サンシャイン60」(高さ226m=建物部)があります。煙突は10m以上高く排ガスを吹き出せるので高層ビルを越すことができるという計算で建設されました。ちなみに23区で一番低い煙突は大田清掃工場の47mで、これは近くに羽田空港があり航空法で50m以上の建物を建ててはいけないことになっているためです。

豊島清掃工場の煙突
高さ210mの煙突
豊島清掃工場搬入口
池袋大橋側のごみ収集車搬入口

プラットホーム

当工場へは豊島区のほか、板橋、北、新宿区等のごみも一部持ち込まれます。許容量を超える場合は近隣工場に回し、逆の場合もあります。入ってきたごみ収集車は、まずごみの重さを量る計量機に車ごと乗り、測定し、車輌と運転者の重さを差し引くとごみの重量が出ます。それからプラットホームに行き積んできたごみをごみバンカに落とします。 

豊島清掃工場のプラットホーム
ごみ収集車がごみをバンカに下ろす

 1番ゲートの床下にはダンピングボックスがあり、床の蓋が開きます。そこで抜き打ちでごみの搬入物検査を行います。不適物が積んであった場合、指導し持ち帰ってもらいます。

燃焼不適物

この工場の焼却炉はごみを入れるのにスクリューで回して押し込みます。ホースとかブルーシートとか長いものはスクリューに巻き付いて回らなくなります。焼却炉の下には、不燃物抜出装置がありますが、針金とか金属製ハンガーとかがからむと故障の原因になります。ひどかったのは書棚とか燃料タンク、バーベキューコンロ、フライパンとか。不適物は搬入しないよう日頃からお願いしているのですが、ちょくちょく出てきます。

豊島清掃工場 持ち込まれた粗大ごみ
持ち込まれた粗大ごみ
豊島清掃工場焼却不適物
焼却不適物

ごみバンカとごみクレーン

紙や生ごみが袋に入ったままでは燃やしにくいので、ごみバンカで撹拌作業を行います。クレーンで高いところに持ち上げて下に落とすと袋がはじけます。混ぜたごみを焼却炉の入口の穴に落とします。昼間は人間(クレーンオペレーター)が操作しますが、夜間、クレーンは自動運転になります。

豊島清掃工場ごみバンカ
クレーンでごみを持ち上げて撹拌する

焼却炉

 焼却炉は1号炉と2号炉があります。上からごみが落ちスクリューで押し込まれて焼却炉に入ります。ここは敷地が狭いので縦長の炉です。特徴として下部に砂が入っている。熱せられた砂の上にごみが入ってくると燃えるものは完全燃焼する。燃えないものは不燃物抜出装置で砂と一緒に抜き出し、燃えないものを分別した後、砂は再び焼却炉に戻します。 

豊島清掃工場焼却炉模型
焼却炉模型

排ガス処理

排ガスはろ過式集じん器、排ガス洗浄塔、脱硝反応塔を通し、ばいじんや有害物質を除去します。集じん器にはバグフィルターという細長いフィルターが1炉あたり672本入っています。

豊島清掃工場排ガス処理装置模型
バグフィルター模型

灰バンカ

 焼却炉から排出された灰がたまる灰バンカがあります。クレーンバケットで灰をつかんで、下で待つトラックに積み込みます。1台あたり4~6㌧の灰を積んで 灰の資源化施設や中央防波堤埋立処分場に運んでいく。

豊島清掃工場灰バンカ
灰バンカ

タービン発電機

 焼却炉で発生した熱によりボイラで蒸気を発生させ、蒸気タービン発電機を回します。当工場は最高出力7800kW、通常2炉動いている時は5500kWくらい発電します。発電した電気で工場の機器などを動かしますが、余った電気は電気事業者に売却しています。

ボイラで発生した熱は、健康プラザとしま11階にあるプールにも供給されています。 

豊島清掃工場タービン発電機説明
タービン発電機説明図
健康プラザとしま
健康プラザとしま入口
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中央制御室

 6名で構成された班が4つあり、交替で24時間工場を監視しています。表示されている数字は発電している電気の量で、マイナスは売っていることを示します。別のモニターにはごみを燃やしている炉内の状況が見えますが、ピンク色に見えるものは炎で、周囲の影はクリンカと言って灰などが塊となり焼却炉の壁に焼き付いている状態を表します。 

豊島清掃工場中央制御室
中央制御室

分析室

 分析室では排ガス、排水の検査、分析を行うことができます。

豊島清掃工場分析室
分析室

最終処分

ごみを燃やすと体積は20分の1の灰になります。それを東京湾の中央防波堤にある埋立処分場(都が設置・管理)に運びます。現在は「新海面処分場」という区画に埋め立てていますが、ここは23区が使える最後の処分場で、このままでは50年しかもちません。

新海面処分場の位置図
中央防波堤にある埋立処分場、新海面処分場の位置図(東京都ホームページより)

 埋立処分量を減らすためには一人ひとりがごみを減らすことが重要ですが、東京二十三区清掃一部事務組合においては灰の資源化に取り組んでいます。以前は、灰を高温で溶かしスラグという砂状の物質にする灰溶融炉をいくつかの工場に併設していました。近年は、灰を民間の資源化施設に運搬していますが、問題はセメント工場など遠隔地にある資源化施設が多く、運搬にコストがかかることです。

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