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内モンゴルの酸乳をヒントに三島海雲が開発した「カルピス」、多彩な健康食品も展開

 国民的飲料として永く親しまれてきた乳酸菌飲料「カルピス」。生みの親、三島海雲が内モンゴルの酸乳をヒントに大正時代に作り出した。乳酸菌の研究が発展し、関連製品は様々な健康食品に広がっている。「カルピス」の歴史について、アサヒグループジャパン株式会社広報部の佐野公美さんにお聞きした。

「カルピス®」の生みの親、三島海雲

―「カルピス®」を開発したのはどなたですか。

佐野 三島海雲(1878-1974)です。三島海雲は大阪のお寺に生まれ、中国に渡り内モンゴルを訪れました。元々体が丈夫ではなく旅の疲れもあり体調を崩したのですが、その時 遊牧民が飲んでいた白くて酸っぱい飲み物(乳を大きな瓶に入れて乳酸菌で発酵させた発酵乳「酸乳」)を飲んだところすごく体調がよくなった。それをヒントに日本に帰国してから作ったのが「カルピス®」です。1919年に日本初の乳酸菌飲料として「カルピス®」が発売されました。

三島海雲人物写真
三島海雲(27歳の頃)

独自の「カルピス菌」

―「カルピス®」はどのように作るのですか。

佐野 新鮮な牛の乳、生乳から脂肪分を取り除き脱脂乳にしたところに乳酸菌と酵母の集合体である「カルピス菌」を加え一次発酵が行われます。一次発酵では乳酸菌が働き上質な酸味が生まれます。一次発酵乳に、砂糖を加えると二次発酵が行われ、酵母が働き芳醇な香りが生まれます。最後の仕上げとして味を調え、「カルピス®」ができあがります。

1919年の発売時のカルピス
「カルピス®」(1919年発売時)

―「カルピス菌」とは一般にある乳酸菌ではなく独自のものなのですか。

佐野 「カルピス®」の風味や味わいを生み出す唯一無二のものです。三島海雲が「カルピス®」を初めて作った時から同じ菌を、継ぎ足し継ぎ足し受け継いで使っています。基本的な作り方は100年以上変わりません。

―カルシウムを加えたという話がありますが。

佐野 1919年の発売当時は日本人にカルシウムが足りないと言われており加えていましたが、今は添加していません。原料の生乳に元々カルシウムが含まれています。

希釈用飲料とストレート飲料

―製品は希釈して飲むものととそのまま飲めるタイプがあるわけですね。

佐野 希釈タイプのものとそのまま飲めるストレート飲料があり、ストレート飲料は「カルピスウォーター®」や炭酸が入った「カルピスソーダ®」、その他、フルーツの味わいが楽しめるものなどのバリエーションがあります。

カルピス
「カルピス®
カルピスウォーター
「カルピスウォーター®

―希釈はどのくらいうすめるとよいのですか。

佐野 おすすめしているのが4~5倍ですが、「カルピス®」はお好きな濃さで召し上がっていただけるのが魅力の一つです。ご自身のお好みの濃さでお楽しみいただきたいですね。

―昔原液は腐らないから軍の携行用に使用されたということですか。

佐野 発売当時、国民の健康を増進した滋強飲料としていたことが認められ、軍需用に採用されたと記録に残っています。「カルピス®」はお早めに召し上がっていただいた方が、フレッシュな美味しさをお楽しみいただけます。開栓後は冷蔵庫で保管いただき、10日~2週間を目安に飲みきることをおすすめしています。

「カルピス®由来の乳酸菌科学」シリーズ 睡眠の質を向上させる「届く強さの乳酸菌W(ダブル)」

―健康関連の製品も出されていますね。

佐野 「カルピス®」を起点に乳酸菌の研究を進めてきており、その中から様々な健康関連商品が生まれています。「カルピス®由来の乳酸菌科学」シリーズとして現在展開している飲料が5つあります。

「届く強さの乳酸菌W(ダブル)」はガセリ菌CP2305株という乳酸菌を配合し、心理的なストレスを和らげ・睡眠の質向上、腸内環境改善に役立つ機能があることが報告されています。

カルピス「届く強さの乳酸菌」
「届く強さの乳酸菌w200」

「アミールW」はラクトトリペプチドという「カルピス®」の製造過程で発酵した乳の中から見つかった機能性関与成分を配合し、血圧を低下させたり血管のしなやかさの維持を助ける機能性表示食品です。

「守る働く乳酸菌」はL-92乳酸菌を配合し、体調に役立つ飲料です。

「ラクトスマート」は乳酸菌CP1563株の働きで、BMIが高めの方の体脂肪を減らすのに役立つ機能があることが報告されています。

 他にドラッグストア限定商品では、ラクトノナデカペプチドの働きで認知機能の一部である記憶力を維持する機能が報告されている「脳活サポート」もございます。

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―「カルピス®」は乳酸菌なのでそもそも健康効果があるのではないですか。

佐野 もともと「カルピス®」は、生みの親である三島海雲が「おいしくて体に良い飲み物で、日本の人々に健康で幸せになってほしい」という思いから開発された飲み物です。発売当時より三島海雲が唱えた「おいしいこと」「体に良いこと」「安心感のあること」「経済的であること」という4つの本質価値を大切にしてきました。一方で「カルピス」を飲むと健康効果がある、ということをうたってはいません。健康効果が期待されるものとしては、先ほどご紹介した「カルピス®由来の乳酸菌科学」シリーズとなります。

―「カルピス®」のキャッチフレーズは。

佐野 発売当初は「初恋の味」というキャッチフレーズが生まれ日本中に広まっていきました。現在では、「カルピス」ブランドは「人と時をつなぐ、“甘ずっぱいおいしさ”がみんなの“幸せ”を増やして、世界の“ピース”に貢献する」をテーマに掲げています。

「初恋の味」のコピー(初めての新聞広告)

2016年にアサヒ飲料に統合

―現在、「カルピス®」はアサヒ飲料から販売されていますね。アサヒ飲料が目指しているものを教えてください。

佐野 2016年に当時のカルピス株式会社の飲料事業はアサヒ飲料に完全統合され、現在はアサヒ飲料で「カルピス®」を販売しています。アサヒ飲料は、飲みものを通じて世の中を明るく楽しくしていきたいと考え「100年のワクワクと笑顔を。」を社会との約束として掲げています。

―本社機能はどこに。

佐野 東京・浅草のアサヒグループビルに本社機能があります。

―工場はどこにありますか。

佐野 アサヒ飲料の工場は、明石工場(兵庫県明石市)、群馬工場(群馬県館林市)、富士山工場(静岡県富士宮市)、北陸工場(富山県下新川郡)、岡山工場(岡山県総社市)にあります。希釈タイプの「カルピス®」は群馬工場、岡山工場で作られています。群馬工場には「カルピス®」みらいのミュージアムという見学施設がありますので機会があればぜひご見学ください。(取材2023年3月)

本紙「三島海雲」記事

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