ふじみ野市の障害者支援団体、NPO法人上福岡障害者支援センター21の創設者、有山博さんが昨年6月で代表理事を退任、このほど感謝と顕彰の集いが開かれた。



有山さんは、障害者を隔離した施設で収容するという旧来の政策の流れに対抗し、町中で障害者が暮らし活動する場を作るという目的で1976年に「とんぼの会」を立ち上げた。その後87年に上福岡障害者自立センター21(任意団体)、2002年にNPO法人上福岡障害者支援センター21が発足、有山さんは永年代表を務め、活動を主導してきた。
現在、①障害者就労支援施設(B型)の協働舎レタス・くまのベイカーズ(生活介護との多機能型・第2くまのベイカーズ)、②グループホームひまわり3カ所、③ヘルパー派遣二人三脚、④相談支援センターあいぼう、などの事業を運営している。
有山さんにお話をうかがった(以下は、「東上沿線物語」第1号=2007年5月インタビュー記事「町の中に障害者の働き暮らす場を」に2026年1月追加取材を加えて作成しました)。

当初は「とんぼの会」で活動
―元々障害者問題に関心を抱いたのは?
有山 大学時代に、身体障害の学生が、同じクラスにいたんです。その人が障害者運動を始めたんですが、いろんな人の介助が必要になり、私も声をかけられた。それがきっかけです。卒業して出版社に入ったんですが、当初は市民運動(とんぼの会)として、障害者の人たちに関わってきました。
―されているのは、一つは障害者に働く場を提供するということですね。
有山 「とんぼの会」という団体で土、日を中心に支援活動をしていたのですが、障害をもった人が、家にいるままで、どこへも行く場所がないという状態がありまして。それをなんとかしよう、というのが最初ですね。
「協働舎レタス」と、「くまのベイカーズ」という作業所
―現在、作業所は3ヵ所ですか。
有山 はい。「協働舎レタス」(就労継続支援B型)と、「くまのベイカーズ」(B型生活介護の多機能型)と第2くまのベイカーズ(B型)があります。
-協働舎レタスとはどんな活動ですか。

有山 仕事内容は、公園の掃除、パン・クッキーの製造と販売、チラシのポスティングが主です。合間にリサイクル品の分類(内職)もあります。現在、定員が20名、登録31名います。
-くまのベイカーズとは。

有山 プルデンシャル生命保険の特例子会社でクッキーを作っているPGSJの仕事の一部を引き受けています。できたクッキーを箱詰めするとか段ボール箱に入れるとか一歩外側の仕事です。今29名の定員(B型20名、生活介護9名)。調理場も持っており、給食やお弁当も作っている。また、ペットの餌の袋づめも行っています。第2ベイカーズ(B型、定員10名)は福祉喫茶(ぽぽ)の運営とそこで売るクッキーの製造もしています。
町の中に出て仕事をし、作業所への行き帰りで住民と交流も
―障害者に町中で働いてもらうのが一貫した方針のようですね。
有山 初期の福祉施設は、畑や田んぼ、山の中にあり、内職や農作業など人の目から隠れている仕事が多かった。送迎バスで、障害もった人を拾って遠くにある作業所へ連れて行って、そこで仕事をするというパターン。そこで働いているとか活動していることが町の人に見えない。そういうのはやめようということで、「センター21」では、町の中に出て仕事をすることを心がけています。作業所への行き帰りで住民の人とトラブルがあったり、あるいは、いろいろ親切にされたり注意されたりということも、ひとつの意義だなと思います。
―一緒に触れ合えばお互いが理解できるということですね。
有山 それがいちばん大きいですね。あとは、障害者手帳をもらってない、閉じこもり気味の人にとっても、表へ出る口実というか、手がかりになるんですね。
―じゃあ、そういう人も、受け入れていらっしゃる。
有山 はい。
―障害者支援のために必要なことが何となく見えてきますね。
有山 障害者を面倒みるのは福祉の世界の職員の人たちですという、固定したワンセットを崩していかないと。もっと広く、一般のボランティアの方とか、近所の人であるとか、企業であるとか、みんなが少しずつ障害を持った人の暮らしを支えていくっていう方向に、いろいろな面で広げていくと。
永年の活動で目標はある程度達成
-永年活動を積み重ねてきて、今回代表を退任されたわけですが、隔離されていた障害者を町中へという目標は達成されましたか。
有山 それはある程度実現したと思います。いま(センター21の)すべての施設は町の中にあり、それぞれが離れずに設置できているかなと思います。
-課題として残っていることは何ですか。
有山 今は法律に基づいた社会福祉事業が活動の大きな比率を占めています。一方でスタートの時点から取り組んでいた他の市民団体との協力とか市民運動的な活動が少なくなってきています。社会福祉事業だけになってきているのがちょっと不安ではある。もっと地域で基盤を広げることを望んではいます。
就労支援工賃は平均2万5000円ほど
-就労支援B型の施設の場合、利用者に支払われる賃金が低いことが問題視されることがあります。
有山 センター21の場合、年間にならすと平均月2万5千円くらいです。中には4万、5万と出しているところもありますので、全国的に見て中間くらいだと思います。
-どうしたら工賃が上げられるのでしょうか。
有山 授産活動で得た収入は経費を除いてすべて、働いている障害者に還元しなくてはいけないことになっています。たくさん稼げばたくさん分配できるという話です。稼ぐには、大きな会社と提携して事業を組むとか収益の上がる仕事を探すとかあるでしょうが、高い工賃を払うためには経営とか職員が一つの会社のようにモノを考えて運営しなくてはなりません。そこに割り切って行けるかどうかです。通っている人たちの世話に力を割かれるので、経営の効率だけに力を入れるわけにはいかない。両方に引き裂かれているのが現状です。
どれだけ稼いで工賃を払えたかで報酬が決まる仕組みは問題
-施設に工賃引き上げを促す政策の方向にも問題がありそうです。
有山 今の就労支援政策の仕組みは、一般企業への就職が一番上にあって就職できない人が一番下みたいな考え方です。就職できる人向けの就労移行支援は職業訓練所の様な位置づけ、次が就労支援A型で福祉作業所だが最低賃金を稼げるくらいの仕事をする、次は就職は無理だがやはり仕事をしようという人向けのB型、その下が生活介護で仕事はしなくていいから毎日の生活リズム健康を整えて、となっている。さらにB型の中でも工賃が高いところに対してよけいに報酬を払うような仕組みです。工賃が低いと作業所に低い報酬しか入らない。仕事ができるできない、稼げる稼げないで国からの報酬が変わってきちゃう。特に下の方のB型で、レタスのように高齢の利用者が多くなっているところは苦しくなる。生活介護も、利用時間によって報酬が変わってくる 若くて元気で休まずに来てくれる利用者が多いところは安定するが、年寄りで週1回か2回しか来ないところは低くなる。このようにどれだけ稼いで工賃を払えたかということで事業者への報酬を上下させるのは作業所に大きな負荷を与えているのではないか。高い工賃払ったら報酬出しますとやられると、あまり働けないような人たちを抱えているところは報酬が下がってきてしまう。だからB型は工賃で報酬をランクづけする制度から外した方がよいと思います。
特別支援学校の卒業生が増えている
-人手不足の問題はどうですか。
有山 危機感を持っています。就労支援の職員、ヘルパー含め最近は募集をかけても若い人は入ってきません。途中で病気をして退社したとか、定年退職者、主婦の方が主です。
-そもそも障害者は減ってきているのですか。
有山 国が養護学校(特別支援学校)をどんどん作ったので、子どもが減っているのに養護学校は増えて卒業生が次々に出てくる。だから障害児とレッテル貼られた子は増えて、利用したいという人は一杯います。レタスもベイカーズも学校からの紹介が多いです。
