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埼玉県 障害者就労支援施設の工賃向上に取り組む「受注拡大ステーション」設置

障害者の就労を支援するため「A型」、「B型」などの施設があり、財政資金も投入されているが、給与・工賃はなかなか上がらない。特に「B型」事業所の場合、工賃は平均で月約2万円と低い。埼玉県は、工賃引き上げに取り組んでいる。(本記事は、埼玉県障害者支援課のご担当者の話、厚生労働省、埼玉県セルプセンター協議会のホームページなどにより作成しました)

「就労継続支援A型」と「就労継続支援B型」事業所

障害者の就労支援施設には、一般企業に雇用されることが困難だが、雇用契約を結んでの就労が可能な人を受け入れる「就労継続支援A型」事業所と、雇用契約までは困難な人に就業機会を提供する「就労継続支援B型」事業所がある。

A型事業所利用者は雇用契約を結び最低賃金以上が適用される他、条件によって雇用保険や労災保険の対象となる。また、利用は原則として18歳から65歳までの障害者に限られる。B型事業所は、雇用契約は結ばず、比較的経度な仕事の内容・時間に応じて「工賃」が支払われる。

就労支援事業所の利用者数(厚生労働省ホームページ)

厚生労働省の調査によると、令和5年度の全国のA型事業所の施設数は4,388カ所、利用者は約9万人、平均給与は月額86,752円、B型の場合、施設数15,159カ所、利用者約35万3000人、平均工賃は23,053円である。

埼玉県のB型事業所の平均工賃は 20,287円で全国41位と下位

  埼玉県の場合、令和7年3月時点で、A型事業所数は131カ所、定員数は2,382人、 B型は事業所数664、定員14,078人となっている。埼玉県のB型事業所の5年度平均工賃は 20,287円で全国41位と下位にある。

  県ではB型事業所の工賃引き上げに本格的に取り組み始めた。令和6年6月から事業所を支援する「就労B型受注拡大ステーション」を、障害者福祉サービス事業所団体の埼玉県セルプセンター協議会に委託し、事業が動き出している。 

共同受注窓口を設置、通信販売関係の梱包・発送、袋詰め、清掃・除草など実績

 その第1の柱が共同受注窓口の設置だ。一般企業からの受注を集約し、対応できるB型事業所とのマッチングを行う。

共同受注窓口の仕組み
共同受注窓口の仕組み(埼玉県就労B型受注拡大ステーションホームページ)

  昨年度の契約実績は発注元54企業、受注先133事業所に及び、目標としていた50事業所を上回り、滑り出しは順調だ。受注業務で多かったのは通信販売関係の梱包・発送、袋詰め、清掃・除草など。給湯器の解体の例もあった。

 事業の2番目の柱が専門家派遣。たとえば事業所が自分のところで商品を開発したいとか、経営的な問題に直面しているとかSNSの運用法を知りたいとか、それぞれのお悩みとかニーズに対して専門家を派遣する。

 3番目は販路確保支援。B型事業所はたとえばお菓子や雑貨を作っているが、自分では販売先を見つけるのが難しい。ステーションの支援により、最近では金融機関の社内販売、車の販売会社でのイベント出展、高校の購買部門への出店など、販路確保につながったという。

 4番目は研修会だ。B型事業所が課題に感じているなどをテーマに、年に2回研修会を開催している。

商品の展示・販売会の経費の補助、県・市町村による優先調達

  「ステーション」事業の他にも、①浦和・大宮駅コンコースでのB型事業所等の商品販売会などを実施する団体への経費の補助②障害者就労施設からの物品・役務の調達に積極的に取

埼玉県セルプセンター協議会販売会
埼玉県セルプセンター協議会による商品販売会ポスター

り組む企業を「プレミアムパートナー企業」・「パートナー企業」・「サポーター企業」として県が認定③県自らが障害者就労施設へ積極的に発注、県内市町村に対しても同様の取組を推進するよう促す「優先調達の推進」。優先調達の一環として、県が管理している児童相談所や保健所、特別支援学校の清掃業務をB型事業所に委託―など、様々な支援策を講じている。 (取材2025年8月)

埼玉県就労B型受注拡大ステーション