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精神障害者 回復への道は外の世界と触れ合うこと

障害者の中でも精神障害者は、周囲に理解されにくく、就労にも難しさが伴う。精神障害者はどんな問題を抱え、回復には何が有効なのか。東上沿線のある町で、精神障害者家族会を運営するTさんにお話をうかがった。

統合失調症は思春期に発病することが多い

―障害者の家族で集まっていらっしゃるということですか。

 精神障害者の家族の会です。今年で13年目になります。

―メンバーは。

 14人ですが、毎回出てくる方は10人くらいでしょうか

―出てくるのは親だけですか。

 当事者会もあるのですが、なかなか出てこないのです。どうしようか困っています

―病気は。

 統合失調症が多いです。あとは、躁鬱病とか。

―統合失調症は生まれつきの病気ですか。

 統合失調症は思春期とか途中で表に出るケースが多いです。その前から少し変でも、気づきません。だからわからない中で、親もいろいろ悩むことになります。

―会のメンバーのお子さんは成人ですか。

 たとえば80代の親と50代の子という組み合わせが主です。若いお母さんもいますが。

家にこもっている人が多い

―障害者本人は普段どうしているのですか。

 家にこもっている人が多いです。あとは作業所に通っている方。グループホームに入っている方。家にいる人にはヘルパーさんに来てもらって介助してもらっている場合もあります。

―会ではどのような活動を。

 初めは、ぐちとか言い合って、それで心が休まります。その後いろいろな行事に参加したりもします。

―一番の悩みは何ですか。

 子どもが家から出られない。仕事に就けない。こもっている人が多い。親が年をとってくる。親がいなくなったらどうなるのか。このままでは心配です。

 あとはなかなか世の中に理解してもらえない。昔は精神病の人を閉じ込めていた。世間は(精神障害者を)気持ち悪いなどととらえてしまう。それは全部ではありません。偏見です。だからこの辺の啓発をしていかなければと思っています。

―昔に比べれば世の中の見方もずいぶん変わったのではないでしょうか。

 よくなってはいますが、まだまだ残っています。だから隠している人が多いのです。

―就労支援を含めていろいろな施設はあります。

 施設が足りないのではなく、出られないのです。施設に行ける人はまだいい。引きこもり。コンビニくらいは行けるが、人と話をしたり、仕事はできない。

病気の判断が難しい

―性格の問題なのか病気なのか区別の難しい面もありますね。

 (病気の判断が)わかりにくいのです。知識がないから、親もよけいに深刻になります。 接し方を間違うと、かえって悪くしてしまうこともある 私たちも学習会もしていますが、初めに知っていればずいぶん違うと思います

―最近は発達障害も注目されています。

 もっとわかりにくいですよね。昔はなかったけれど今はみな名前をつけますから。共通していることは、人間関係がうまくないということです。

もっと世間に理解してもらいたい

―どうすればよいのでしょうか。

 それが悩みです。

―個別にていねいに話をして対応するしかないという意見もあります。

 そうですね。しかし根気がいりますし、そう思ってくれる人が少ないです。

―医療の問題であるとは言えないですか

 先生によって治るケースもあります。だが、よい先生でも、相性もあります

―障害者がもっと表に出れば世間の見方も変わるのではないですか。

 (親も本人も)世間に理解してもらいたいという気持ちもあります。前は外に出ないで中でひっそりやっている人が多かったが、今はこんな病気もあるよと進んで発表することもあります。埼玉県にも「ポプリ(埼玉県障害者団体連合会)」という障害者本人の会があります。

よくなったケース 分かり合える仲間との交流

―よくなったケースはありますか。

 うちの子はよくなった方です。
高校時代頃からどこか変な子だと感じていたのですが、どこが問題なのかわからずにいました。勤めて10年くらいしてからおかしくなり、入院もした。しかし、障害者雇用ですが仕事に戻り、結婚もしたから回復したのだと思っています。

―何がよくなるきっかけだったのですか。

 病院の中でデイサービスというのがあって、同じ病気の子たちと交わる中で、共通のものを感じ、分かり合えることがいっぱいあったようです。知り合いもできて、楽しいこともできた。

お母さんをどう思うかとみんなで話し合うんだそうです。うちの子は「憎んでいる」と。しかし感謝している子もいるわけです。そう聞くと「私はちょっと違うかな」と。見つめ直しをできたのがよかったと言っていました。

 それと運動をしたのがよかったようです。

―何を。

 卓球をやったんです。県大会にも出ました。結局、分かり合える仲間との交流がよかったと思います。親が同じことを言っても、子どもはまた意見されているという感覚で受け止めます。

親とばかりいるのはよくない

―親とばかり一緒にいるのがよくないわけですね。

 うちでは、お母さんはいつも高目線だと反抗されていました。親は無意識で命令感覚になる。「こうしろああしろ」と。同じ病気の子の方が分かり合えるようです。会で、親の不満を言い合う。

 うちの子が「死にたい」と言っていた頃、ある会で、「死にたい人?」と聞かれて、パラパラと手が上がった。ある子が「心配するな、ここを出た時、轢かれて死ぬかもしれないんだから」と一言。うちの子は、「すごく安心した」と言って帰ってきた。共通の悩みの子がいる。外とつながることが一番の回復の道ですかね。

―親がりっぱだと逆によくない面もあるようですね。

 高学歴の親は結構問題です。あるいは警察官とか教師とか堅い人たちのお子さんは、病んでいる人が多い。親はよかれと思って、縛り付けていってしまう。親はそれにきづいていない。子どもはそれに答えて、いい子で行ってしまう。自我をどこかで失っておかしくなる。それは痛感しています。

―障害者同士の交流の場があればよいですね。

 普段外に出られない人でも気楽に行ける場所があればよいですが。私たちも作ろうかと考えたことがあります。親御さんも、どこかでつながっていた方がよいと思います。家族会にも参加いただければ歓迎します。

(取材 2019年4月)

家族会入会希望は yyykaneko2002@yahoo.co.jp
まで問い合わせください。

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