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やきもの 若手作家の成長を支援 とべとべくさ (西浅草) 伊藤貴志さん

東京・西浅草のかっぱ橋道具街にほど近い、やきものギャラリー「とべとべくさ」。やきものに魅入られた店主の伊藤貴志さんが4年前に開いた。店構えに趣きがあり、ゆったりとして気持ちがホッとする展示空間だ。力量ある期待の若手・中堅の陶芸作家を厳選し個展を定期的に開いている。伊藤さんは、作家と一緒に成長していきたい、と言う。伊藤さんにお話しをうかがった。

夢を屋号に

―いつオープンされたのですか。

伊藤 2015年1月です。

―「とべとべくさ」とは。

伊藤 私は若い頃、寝ている時に、道端に生えている草をむしって食べると空を飛べるという夢を繰り返しみていました。その草に自分の中で何となく名前がついていて、それをそのまま屋号にしました。

自分の好きなものに絞ってやりたくて独立

―前は何をされていたのですか。

伊藤 かっぱ橋道具街のはずれに繁盛している陶器店があります。私は元々バンドをやっていたのですが空中分解してしまい、仕事を探している時にたまたまそのお店を見つけました。それまでやきものは全く知らなかったのですが、お願いして入れていただきました。いろいろ見て、3日目くらいにははまっていました。

―それから独立したのですね。

伊藤 そのお店には3年ほどお世話になりました。その間、産地を回り、作家さんに会いに行ったりするうちに、自分のやきものの好みが出てきて、せっかくなら自分の好きなものに絞ってやりたい、独立したいと思うようになりました。しばらく準備をして、物件も探し、辞めて3年くらい後にオープンしました。

やきものは情報量が多い

―やきものの何にそれほど惹かれたのですか。

伊藤 元々形のあるものが好きでした。たとえば、アクセサリーとか衣服とか。形のあるものとしてやきものは情報量が多いです。シルバーならシルバー一色ですが、やきものは、同じ備前焼でも茶色でもいろいろな茶色があり、造形もいろいろな造形がある。見れば見るほどいろいろな発見もあります。また、自然を感じるというか。信楽など岩から切り出してきたような形もあります。きっかけとしては、そういうやきものにすごく惹かれたということがあります。

 今は、使うのが楽しかったり、料理との合わせ方が面白かったり、しつらえも気になってきています。

―お好きなのはどういうジャンルのやきものですか。

伊藤 今のところ土ものが好きです。備前、信楽、唐津、高麗系、美濃系、全般に好きです。磁器も染付の古いものを買ったりしています。

月1~2回個展、30代、40代の作家が主

―ギャラリーは作家の個展で運営されているのですか。

伊藤 月に1回から2回くらい個展をさせていただいて、それ以外の日は常設でいろいろな作家さんのものを少しずつ置いています。

―作家さんは若手が主のようですが。

伊藤 30代、40代の方が多いですね。元々店を始める前から知り合いの信楽の同世代の作家さんからスタートしたこともあり、若い方が多い。意識して同世代の方とお付き合いしています。一緒に成長していけたらいいなという気持ちはあります。

―伊藤さんは今おいくつなのですか。

伊藤 38歳です。

―今、個展を開いている(2019年10月5日~13日)備前焼の曽我尭(たかし)さんも同世代ですね。

曽我尭作品

曽我尭作品

伊藤 曽我さんは、1984年生まれの35歳です。お若いですが古備前を追求される本格派です。

客層も若い

―お客さんの層はどうですか。

伊藤 お客さんも他のお店に比べると若い方が多いようです。

―今、やきものは全体の市場が低迷して、ギャラリーも減っています。

伊藤 私は何も考えず、好きだからと始めてしまったので、まさか縮小している業界だと思っていませんでした。

―その中で作家さんに発表の機会を提供する重要な役割を担われていると思います。

伊藤 せっかく自分が好きになった世界なので、お役にたてればいいなとは思っています。

お客さんがやきものに触れる機会を増やしていく

―やきもののファンを増やしていくにはどうしたらよいでしょうか。

伊藤 やきものは、これまでは限られた人の趣味で、値段も高価で知識がないと店に入るのすらはばかられるものでした。まずその払拭が第一です。そのため、器を見せるだけでなく使い方の提案もして、お客さんがやきものに触れる場を増やしていくことも必要かと思います。うちもレストランと組んで食事会を企画して実際に料理が盛られた器を見てもらい、器ってよいものを使えばよい雰囲気になることを体験してもらえる機会を作っています。

―注目されている作家は。

伊藤 それぞれの作家さんに思い入れがありますが、最近お付き合いを始めた方では 盆出哲宣さん。井戸に力を入れていますが、肌がよくできていると思います。

 陶ギャラリーとべとべくさ 台東区西浅草2-7-1

 (取材2019年10月)

とべとべくさ移転

とべとべくさは2022年4月、旧店舗の建物取り壊しに伴い、新店舗に移転しました。新しい住所は、〒104-0032 東京都中央区八丁堀1-4-5幸和ビル1F 茅場町のオフィス街の近くです。

とべとべくさ

とべとべくさ新店舗

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